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コムコラム21 書評:徹底した仕組みづくりと、コンテンツ重視のWebマーケティングで活路を見出した「町工場の秘密」

東京・港区三田にある製造業メーカー専門の広告代理店[コム・ストーリー]のプランナーGです!
お客様との打ち合わせや雑談でよく耳にするのが「会社の事業継承問題」です。当社の多くのお客様は、100名以下の中小企業がほとんどで、いわゆる「町工場」と言われるお客様なら10名以下の従業員規模も珍しくありません。

帝国データバンクが全国27万社を対象に行った調査※1によると、国内の中小企業が抱える大きな悩みの一つであり、「後継者がいない、または未定」と回答した企業は、全体の52.1%(約14万社)におよびます。以前なら創業者が実親や祖父でその実子が入社後、高速エスカレータ方式に課長から部長となり、いつしか取締役となって社長に就任…以前なら「親族経営による会社のあるある話」でした。たとえ親族に後継者がいなくても、役員が後を継ぐ「内部昇格」やM&Aという手もあるが、創業者の「強すぎる想いやこだわり、迷い」があだになり、生前に跡目が見出せず、あえなく廃業も少なくないといいます。
このように「後継者がいない」事業継承問題が全国に蔓延、ニッポンの中小企業の大きな課題の一つになっています。

たとえ後継者問題をクリアしても、後任の社長が新しい組織でビジネスを回しつつ、売上が赤字なら黒字に転化させ、未来への方向性を見出さなければなりません。経営理念とビジョンのもとでしっかり経営戦略を立て、現場社員のやる気や忠誠心を奮い立たせ「戦えるチーム」や「強い会社」を目指す。それにはマーケティングやブランディング、社内の環境整備、評価制度などを含めた「仕組みづくり」が不可欠です。

ビジネス本『社員が減っても儲かる「町工場の秘密」』は、実父(先代社長)と実兄の急死によってステンレス加工会社を継いだ著者が、実際に体験した事業継承の難しさなどをまとめた良書です。
その会社は、3K※2+「帰れない」「厳しい」「給料が安い」の6K職場で、入社時から社員の意欲も駄々下がりの状態。5S※3どころか「工場の床にタバコのポイ捨てが当たり前」の社風で、社員同士の挨拶すらなく、同僚同士での無関心や惰性によるモノづくりが常態化していたという。その中心にいたのが実父だった!? ことに愕然したという。
著者が社長就任した3年後には、経常利益マイナス3,570万円を計上。先代が亡くなったことを理由に工場長が辞職、その後を追うように半数の従業員も辞めてしまう。自身も肺がんが見つかるという、文字通り「ボロボロのどん底」から経営を立て直し、V字回復したか? を綴っています。

本書がおもしろいのは、会社建て直しのため、がむしゃらで手探りの経営が、じつにリアルに感じられること。
まえがきで自身が語るように

「机上の空論ではなく、泥臭く、汗と涙を流しながら見つけ出した『生身の経営術』」

に嘘はなく、悪戦苦闘の中に実行したトライ&エラーに「決意と覚悟」をひしひしと感じました。

□ 利益度外視の値引き+手間と時間を費やす個人への安売りを辞め
 「ヒアリンング重視の法人提案営業」に絞り込む(ターゲット層の再設定)

決算書作成を親族や税理士など他人に任せず、無料ソフト「Googleスプレッドシート」で自作
(経営の“徹底的な見える化”と分析=金の流れを把握。数字は“社長の健康診断書”、まずは自ら痛みを感じろ!)


因習化した社内ルールや制度などの廃止(捨てる勇気で“美しくそぎ落とす”)

顧客のニッチなニーズを営業で拾い、付加価値を持つオンリーワンの商品化

など詳細は同書を読んでいただきたいが、莫大な投資と負担なるシステム導入や、附和雷同にDXに走るのではなく、経営状態に合った「できること(小さな施策)」を実直に積み重ねていく。切羽詰まった状態に関わらず、様々な施策や技術を取り入れつつ、光明を見出す行動力に感服するばかりでした(なによりドラマチック!)。

会社の規模を問わず、結果が出ない会社とは、

「経営会議で議論や仮説に溺れ、何一つ実行がともわないこと」

第2章の「小口の特注品を宝の山に変える受注プロセス」で著者がいう

「一つひとつの注文には魂を込める。しかし、
その裏側では、徹底的に考え抜かれた仕組みで利益を生み出す」

モノづくりの本質を追求しながら、時代時代の技術トレンドを柔軟に取り込み、施策に落とし込む。それら一つひとつに目新しさこそないが、現状分析後に戦術と戦略を踏まえながら、様々な施策を愚直に実行し完遂させることは、できそうでできない。経営戦術の成否を決める「分水領」は、現状を冷徹に数値で分析を行い、

分析(見える化)→ 施策(考える)→ 行動(やる)→ 改善(直す)

のPDCAを繰り返すことでしか成功や効果が得られない。
自社ステンレス加工技術の高さや付加価値を全国規模へ知らせ、売り上げを改善させたのが、Webマーケティングだった。製作事例の写真を惜しみなく掲載し、「なぜ、高いのか?」をその工程と手間ひまをわかりやすく「言葉化」したという。
著者いわくWebマーケティングで肝心なのは、

「問い合わせを増やすこと」ではなく、受注率を上げること

と強調する。デザイン重視のカッコつけた企業サイトではなく、

「会社の歴史や職人の顔、汗と油の匂いがする工場。その物語こそが、お客様の心を動かす」

と述べると同時に、製造業ならではの「中身重視のコンテンツ」であることを説いています。

本書との出会いは、大型書店で結構な冊数の「平積み(表紙が見える平台陳列)」を見つけ、手にしたのがきっかけ。聞き慣れない版元なのでネットで調べたところ、「経営者向け出版コンサル」として出版されたものでした。
正直、出版コンサル&自費出版本と知っていたら読まなかったと思いますが、流通コストや返本リクスがある「書店売り」も行うコマーシャル本と知り驚きました。版元サイトを読むと「自費出版と商業出版の新ハイブリッドビジネス」とありますが、本の内容自体はきちんと編集がなされ、文章も読みやすい。2、3時間で気軽に読めるボリュームです。

中小製造業の経営者だけでなく、リーダーやマネージャー、現場の販促担当者にもオススメ。営業や組織の課題がわかりつつも「見てみないふり」で何も行動しない管理職らの「重い腰」を目掛け、蹴り一発をブチかます1冊。小さな勇気と“ど根性のタネ”がもらえます(了)


滝澤幸広 著、マネジメント社 刊、1,760円(税込)

※1 全国「後継者不在率」動向調査(2024年)より(『社員が減っても儲かる「町工場の秘密」』、滝澤幸弘著、マネジメント社刊)』
※2 「きつい」「汚い」「危険」 ※3 「整理」「整頓「清掃
清潔」しつけ」の略。工場の職場改善手法やスローガンのこと

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