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コムコラム4:かんばんにアンドン、工場は楽しい!

ハンドツールから感じられる
会社や現場のモノづくりの矜持

東京・港区 田町(三田)にある製造業・メーカー専門広告代理店のコム・ストーリーのGです。会社案内や動画、製品カタログなどの撮影作業でお客様の工場に伺うことがあります。工場エリア内に入るやいなや、スタッフの皆様が元気な挨拶でお迎えいただき、5Sの行き届いた工場内は、空気が凛として「じつに清々しい」です。

お客様の組立ラインや、試作開発のエリアに行くと、自然とハンドツールや電動工具に目がいきます。ラックやワゴンには、高価な海外製のツールこそないですが、ベッセルやTOP、TONEといった、リーズナブルで良質な「MADE IN JAPAN」のブランド品が並び、整理整頓はもちろん、実に手入れが行き届いています。製造業メーカー様のお仕事に携わるようになって、NC旋盤機からマシンニングセンタ、PLCといった装置や機械、制御盤、付帯装置のメーカーにまで目がいくようになりました。
それらツールや装置・機械選びは、会社や現場エンジニアのモノづくりへの考え方や哲学が垣間見え、たいへん興味深く楽しいものです。

かんばんとアンドンによる
ミスを前提としたアナログ手法

中小企業の製造業メーカー様の生産ラインは、比較的に生産数が少ない工場では「ロット生産」がほとんど。「工程内検査」または「最終検査」により仕掛かり品や最終製品の不良品を検出しています。ただし、ロット生産は多品種・大量生産の大きな工場には向かず、通称「かんばん方式」という生産方式が採用されているところが多いです。以前、取材でかんばん方式の給湯器工場を見学したことがあり、「いろいろな仕掛品が混流しているのに、ミスもなくよく周っているもんだ」と感心しました。

かんばん方式は、トヨタ自動車の大野耐一氏(おおのたいいち、当時副社長)が考案したもので、正式には「トヨタ生産方式(TPS=Toyota Production System)」といいます。「ジャストインタイム(必要なときに、必要なモノを、必要なだけ、迅速に作る)」というコンセプトの元、工場の工程間や、外注(納入会社)間でかんばん(指示票)をやりとりすることで、工場の生産管理や効率的で「徹底したムダを排除した生産管理」を実現するものです。

トヨタ生産方式で使われるかんばんは、紙やプラスチック、鉄製で、代表的な工程かんばんのサイズはサイズ幅200×高さ80mm。かんばんには、車種・部品名・品番・数量などの部品情報が記載されています。「工程間」「納入業者」間でやり取りすることで生産管理をコントロールします。

先日とある製造業メーカー様のお客様から、パワポスライド制作に関するお問い合わせがありました。自社製品ラインナップの有効性を訴求するもので、自動車メーカー様やTier1(ティアワン)サプライヤー様といった、かんばん方式を採用する自動車工場(部品やモジュールを含む)がターゲットユーザーになります。

コム・ストーリーでコンテンツ企画する際は、お客様へのヒアリング前後に情報収集を行います。その際、情報の信憑性の面でサイトより、まず書籍やムック本を探します(電子書籍ではなく紙の本です)。情報源の信憑性や、系統立て情報や知識を得ることができ、本でキーワードにアタリをつけて検索エンジンで詳細情報を知るほうが、情報収集のための精度や信頼性、ヒット率も高くなります。

お客様のご依頼内容を深く理解して、企画提案書にまとめるため、かんばん方式の解説本を探すことにしました。以前、別のお客様から受けた展示会パネルのプランニングのため、半導体工場の解説本を購入しました。



半導体工場のすべて〜設備・材料・プロセスから復活の処方箋まで(菊池正典 著、ダイヤモンド社 刊)

この本の「自動車工場版はないか?」と思い、東京駅のタワー型書店で物色していたところ、



自動車工場のすべて〜エンジン製造・塗装・組立から生産管理の秘訣まで(青木幹治 著、ダイヤモンド社 刊

を発見しました。棚に縦陳列の人気本で、半導体工場と自動車工場の「生産工程」や「生産管理」という「トップシークレット情報」をまとめています。amazonなどのレビューでは「内容が浅く、ツッコミが足りない」というレビューがありましたが、概要と詳細が豊富なイラストや図でわかりやすく解説。文章も読みやすいので、工場の全体像や生産工程を「バクっ」と理解できる良書でした。

本書の第2章では「くるま作りの工程とかんばん」と題して車体/組立/成形工場など各工程でのかんばんやアンドン活用法を紹介。その内容は本書に譲りますが、かんばん自体がデジタルではなく人の目視確認による「機械仕掛け」にこだわっていること。さらに新人やベテラン作業員、リフトマン、管理者を問わず、「人は誰でもミスをする」を前提とした「ミスが発生しても、不良品を出さない」仕組みに感嘆しました。ちなみにかんばんをはじめ仕掛けのほとんどは内製であり、現場の工夫によってトラブル発生時の修理をスピーディに行い、製作費もぐっと安価に抑えているといいます。

売上高37兆円の世界企業に息づく
クルマづくりにかけた男たちのロマン

売上高37兆円を誇る製造業メーカーの「Top of The top」が、創業者・豊田佐吉の機織り品の不良品検出のためにアンドン考案以降、豊田喜一郎氏、豊田英二氏、トヨタ生産方式の祖・大野耐一氏まで、試行錯誤と創意工夫の結果、今日の生産管理を実現していることに“ロマン”を感じました。
ちなみに著者の青木幹晴氏は、1978年にトヨタ自動車入社後、本社工場や米州事業部、田原工場などの業務を経験した「生え抜きのトヨタマン」。30年にわたりクルマづくりの生産現場で活躍したという著者の筆致は、解説本として実に白眉でした。オススメの良書です。

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